VICL-64037/全13曲収録/¥3,045(税込) 参加ミュージシャン 01. 個人的理由
02. 絵空事
03. 七月
04. 鰺
05. 古靴店
06. まちぼうけ
07. 野バラ |
父・高田渡の同名詩集の冒頭の詩。アルバム制作中に突如出来た曲で、書かれた当初からアルバムの一曲目が宿命づけられていました。録音はマイク一本で採用されたのもテイク1であります。 | ||
震災前の2011年に書かれた曲で、この頃の僕は落語的な詩世界を模索していたと記憶しています。当初はストーリーだけを考えて英語詩を友人に依頼したものの震災によって制作が遅れ、我慢出来なかった僕が日本語詩を書きました。その後、完成した英語バージョンの「Hey Mr. Boatman」は何度かライブでも演奏しました。ここでのリードギターは鈴木茂さん。説明不要の伝説のギタリストはこの日も何とファーストテイクでこの素晴らしい演奏を繰り広げたのです。 | ||
今回のアルバムでは「個人的理由」から4篇の曲を付けましたが、その中で最も難産だった曲であります。元々は映画「箱入り息子の恋」の主題歌を想定して書かれましたが、途中で断念した経緯もあり、短い詩ながらもコラージュ的に曲調やキーがコロコロ変わる、我ながら不思議な曲で、はっぴいえんどやバッファロー・スプリングフィールドやジェームス・テイラーやキャロル・キングをマッシュアップした曲調だが、出来上がった今となってはどこに苦労したのか忘れています(笑)今回のアルバムでは唯一ペダルスティールを弾きまくっている曲でもあります。 | ||
2004年のアルバム「RT」の中の楽曲「Aji」のリメイク。というか本当はここでの詩のいくつかが最初に付いていたこの曲を、インストにアレンジし直したのが「Aji」だったのですが。自分が日本語で歌うことを後押ししてくれた曲でもあります。詩の内容は鍵っ子だった僕の幼少期のお話で、途中のギターソロは同じく僕が幼少期によく聴かされていたフランスのジプシー・スウィングの開祖ジャンゴ・ラインハルトの劣悪コピーです(苦笑)それを払拭するようなベースの伊賀航、ドラムの伊藤大地とのコンビネーションは抜群でこの曲もファーストテイクです。 |
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昭和を代表する大詩人・金子光晴の名作詩。この曲を書いた当初は、もっと大編成のシャンソン的な音世界を描いていたのですが、気がつけば恐ろしくシンプルに。この曲も早くから完成しており、ライブでも毎回歌っていましたが、アルバムでは原田知世さんに歌って頂きました。僕が歌うとフランスの街角でひたすら絶望する男の姿だけが残るが、知世さんが歌うと、そこに微かな希望が見え、絶望の中にも凛とした強さみたいなものすら感じます。歌い終わった後の知世さんの言葉「お芝居を演じているようでした。」がとても印象的でした。 | ||
同じく高田渡「個人的理由」から。この曲はアルバム完成間近に作曲され、録音もその他の作業が全て終了した後にされました。都内某所で録音中の斉藤和義さんのもとに半ば道場破り的に挑んだこの録音でしたが、斉藤さんの柔らかい歌声とイナたいギターが冴えてまくり。ふたり向かい合ってダビング無しの録音は緊張しましたが、ライブ感溢れる演奏がパッケージされたはずです。 | ||
高田渡の晩年の名曲「ブラザー軒」は菅原克己という、これまた偉大な昭和の詩人の詩でした。この「野バラ」もそんな菅原さんの詩で僕自身が日本語現代詩に曲を付けるというタカダワタル的手法を自分でもトライしようとするきっかけになった曲です。ここでのリードギターはくるりの岸田繁くん。常々、岸田くんは現代の日本最強のロックバンドのフロントマンであることで見えにくいが、最高のリードギタリストでもあると思っています。曲の最後はそんな岸田くんをお迎えしてのリードギタリスト合戦(笑)二人のおっさんがスタジオで向かい合いながら演奏したのが印象的でした。 |
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僕の祖父・高田豊の詩集「妄想性詩集」から。書かれたのは大正14年5月というが、今も昔も変わらぬ高田一族の泥酔ぶりに思わず苦笑してしまいます。メロディーは映画「横道世之介」のテーマ曲の改作です。 |
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pupaのファースト・アルバムに書いた楽曲をアレンジした、昨年のデビュー10周年ライブ@渋谷さくらホールでのバージョンの再演です。演奏家は資生堂「花椿」の撮影の際に招集された高橋幸宏さん、高野寛さん、小山田圭吾くん、高桑圭くんとの「the band with no name」に、ゴンドウトモヒコくんと堀江博久くんのpupa組を加えた、正しくスーパーセッションでした。こんなに濃ゆいメンバーなのに、音がぶつかり合わないのはミュージシャンシップの賜物であり、それでいながら、それぞれのパートで皆さんの音がそれぞれ主張するのは流石です。pupaバージョンではヴォコダーで聞き取れないように処理していた日本語詞部分を今回は復活させた事も記しておきます。 |
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このアイルランドの古い楽曲を高田渡は偏愛していて無数のバージョンをコレクトしていました。あちらの世界で、このバージョンもきっとその棚に加わる事でしょう。 | ||
作詞をキセルの兄・辻村豪文くんに依頼して出来上がった映画「箱入り息子の恋」の主題歌。歌は細野晴臣師匠。細野さんに「器楽的な曲」と言われた通り、歌い辛い楽曲にも関わらず、その歌声はいつも以上に瑞々しく、完成した時には涙が出そうでした。はっぴいえんどの3枚目のような、西海岸の乾いた空気感の音と湿った日本語詩というコンセプトを、豪文兄さんが見事に表現してくれました。途中のインストパートは劇中の音楽の引用で、サントラ盤「箱入り息子の恋」には、まだまだ歌モノに進化しそうな曲たちが沢山ひそんでいます。 | ||
前述の高田豊の「妄想性詩集」の中の詩に高田渡が曲を付けた楽曲。同曲収録のアルバム「石」はファンの間でも人気の高いアルバムのひとつであり、僕が産まれる寸前に発売されました。今回のバージョンのジワジワ染み渡るようなピアノは坂本龍一さん。しんしんと寒い世界に少しずつ暖かみを与えてくれるような名演奏だと思います。高田渡のベルウッド期(「ごあいさつ」〜「石」)には、いつも細野さんと名ディレクター・三浦光紀さんが関わっていましたが、その三浦さんが当時「芸大にすごいピアニストがいる!」と言っていた、その人が教授だったと、よく母に言われたことを思い出しました。 | ||
「個人的理由」の中の詩で最初に楽曲化を試みたのが、この曲でした。そして何故だか理由は分かりませんが、ビートルズ的な曲調を目指してあっという間に書かれました。若かりし頃の親父が京都の街を歩く、後ろ姿を思い浮かべながら。 |
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